宇都宮市英語専門進学塾EX 塾長のブログ
「細かい文法なんて気にしないで、まずは英語に触れることが大事」
―― このアドバイスを英語教育の現場で耳にすることが増えました。確かに一理あります。
しかし長年生徒を見てきた立場から言わせていただくと、この言葉には危険な曖昧さが潜んでいます。
「細かい文法なんて気にしないで」が、いつの間にか「文法なんて気にしないで」にすり替わっている生徒が急増しているのです。
最近、偏差値60以上の高校に通う生徒たちですら「仮定法の倒置」というルールを知らないケースが増えています。
たとえば "Had I known the truth, I would have told you." という文です。
これは "If I had known the truth, I would have told you." の倒置形ですが、この構造を理解していないと、もし、真実を知っていたなら、という意味が全く理解できなくなります。
長文読解でこのパターンに遭遇した時、文頭のHadを見て、文全体の意味が取れなくなる。これは「細かい」どころか、英語力の土台に関わる問題です。
もう一つ、よく「細かい文法」の代表格として槍玉に挙げられるのが「不定詞の意味上の主語」です。
"It is important for students to study hard." と "It is kind of you to help me." では、forとofの使い分けが必要になります。前者は「学生が勉強すること」という行為に焦点があり、後者は「あなたが親切だ」という人物の性質に焦点があります。
この区別ができないと、英文のニュアンスが正確に読み取れません。大学入試の長文では普通に出てきます。
このパターンを知らなければ、文脈から推測しようにも手がかりすらつかめません。
私が危惧しているのは「細かい文法は不要」という言葉が文法学習全般への軽視につながっている現状です。
英語教育改革で「使える英語」が重視されるようになったのは良いことです。しかしそれは文法を軽視していいという意味ではありません。
生徒が「これは細かい文法だから覚えなくていい」と言った時、それが本当に些末なことなのか、それとも英語の根幹に関わる重要な文法なのかを見極める必要があります。
英語学習において避けて通れない文法と優先度の低い文法は確かに存在します。しかしその線引きは慎重に行われるべきです。
当塾では本当に必要な文法と後回しにしても良い文法を明確に区別して指導しています。「使える英語」と「正確な文法理解」の両立こそが求められる英語力だと考えています。が求められる英語力だと考えています。

