「音読」の本質

なぜ英語力が劇的に伸びるのか?

· 英語勉強法,塾長の指導観・雑感

宇都宮市英語専門進学塾EX 塾長のブログ

英語に限らず、国語においても「音読」は多くの学校や塾で推奨されています。

 

しかし、音読の本当の意味を正確に理解している保護者は意外と少ないのではないでしょうか。

 

単なる発音練習、あるいは宿題をこなすための「儀式」になってしまっているケースも少なくありません。しかし、音読には実は、私たちが思っている以上に本質的かつ高度な訓練効果が潜んでいるのです。

 

まず、「音読」とは何かを改めて考えてみてください。

 

目で文字を追いながら、口で発音し、耳で自分の声を聞く――この複合的な作業が同時に行われています。

 

これ自体、かなり高度なマルチタスクであり、脳の複数の領域を一度に活性化させているのです。

 

特に英語の音読の場合、日本語とは構造が異なるため、より高い集中力が必要となります。

 

英語の文章を音読するとき、生徒は自然と「句」のかたまり――いわゆる「チャンク」に注目せざるを得ません。

 

例えば、"After finishing his homework, Tom went out for a walk."という一文を読むとき、「After finishing his homework(宿題を終えた後)」と「Tom went out for a walk(トムは散歩に出かけた)」という具合に、意味のかたまりごとに声を出すようになります。

 

これは、英文法の基礎である「句構造文法」の感覚を体得する絶好のトレーニングです。

 

また、音読にはもう一つの意外な効用があります。

 

それは「視線の送り方」と「短期記憶」のトレーニングです。生徒は往々にして、今読んでいる単語だけに集中しがちです。

 

しかし、英語の音読訓練を続けると、次第に「今読んでいる場所より一歩先」に視線を送りつつ、頭の中で前のフレーズを短期的に保持することができるようになります。たとえるなら、車の運転で道路標識を早めに視界に入れておく感覚に近いでしょう。

 

私の塾では、実際にこんな現象が起きています。例えば、最初は一語一語つっかえながら音読していた生徒が、2週間もすると句ごとにリズムよく読み、意味を自然に理解しながら音読できるようになりました。

 

こうした変化は、テストのリスニングやリーディングだけでなく、英作文の質にも現れてきます。単なる暗記型の学習では決して得られない、「文をかたまりで捉える力」が着実に身につくのです。

 

誤解してほしくないのは、音読が「楽な作業」ではない、ということです。時には退屈に感じるかもしれませんし、目に見える即効性がないように感じるかもしれません。しかし、この地道な積み重ねが、ある日突然、生徒自身の英語力として花開く瞬間がやってきます。

 

最後に、家庭で音読をサポートする際のヒントを一つ。お子様が読んでいる箇所より、ほんの一語先を一緒に目で追う――そんなサポートを心がけてみてください。

 

保護者の「視線の送り方」が、意外にもお子様のリズムを助け、英語の句構造を無意識のうちに体得する近道になるかもしれません。

 

音読とは、単なる「読む練習」ではなく、文法力・記憶力・集中力を総合的に鍛える知的作業です。ぜひご家庭でも、その奥深さを実感していただきたいと思います。