遊びが学びに変わる瞬間

子どもを熱中させる学習の本質

· 塾長の指導観・雑感

宇都宮市英語専門進学塾EX 塾長のブログ

「ゲーム感覚で楽しく勉強」という言葉に、多くの保護者が期待を寄せます。

 

しかし塾の現場で長年子どもたちを見てきた私は、この言葉に潜む落とし穴を知っています。楽しさだけでは、子どもは学び続けられないのです。
 

先日、ある生徒が教室でこう言いました。「先生、家で使ってるこのアプリ、もうやってない」。その生徒は当塾では国語と算数を受講し、英語は受講していません。

 

そして英単語学習アプリは英会話の先生の勧めで使っていたそうです。

その英単語学習アプリは可愛いキャラクターが登場し、正解するとコインがもらえる仕組みでした。初日は夢中でしたが、三日後には完全に飽きていました。そこには「成長している実感」がなかったからです。


人間の脳は、ただ楽しいだけの刺激には慣れてしまいます。脳が求めているのは「挑戦と達成のサイクル」なのです。
 

塾で数学の問題演習を行うとき、得意な子にはあえて「ちょっと難しい」レベルの問題を選んで解いてもらうようにしてます。

 

すぐに解ける問題ばかりでは作業になり、難しすぎると諦めてしまう。重要なのは「努力すれば手が届く」という絶妙なラインです。
 

子どもを熱中させるのは「楽しさ」ではなく「明確なルールと達成可能な目標」です。
 

ゲームがなぜ子どもを夢中にさせるのか。ステージごとにクリア条件があり、上達が数値で分かるからです。ゲームは「秩序立った挑戦の連続」なのです。
 

学習も同じ構造を持つべきです。英単語なら「今日は昨日より三個多く覚える」、漢字なら「五分間で正確に書けた数」を記録する。この「測定可能な進歩」が学習意欲を支えます。
 

「うちの子は勉強が嫌いで」という言葉をよく聞きます。しかし多くの場合、嫌いなのは「勉強」ではなく「成長が見えない作業」なのです。子どもは自分が上達することを喜ぶ生き物です。その上達が目に見えなければ、意欲は続きません。
 

ご家庭でできる工夫もあります。算数の計算ドリルをやるとき「今日は何分で終わったか」を記録してください。

 

グラフに時間を書き込むだけで「速くなっている」実感を得られます。


ただし目標は「達成可能」でなければなりません。前回六十点だった子に満点を求めるのではなく、「次は七十点」という段階的な設定が継続的な意欲を生みます。
 

また、失敗を責めない環境も不可欠です。ゲームで何度失敗してもプレイヤーが続けるのは、失敗が「次への情報」だからです。間違えた問題は弱点を教えるデータです。
 

学習に「遊び心」を取り入れることは有効です。しかしそれは、ただ面白おかしくするという意味ではありません。

 

明確なルール、測定可能な進歩、適切な難易度――この三つが揃ったとき、学習は子どもを夢中にさせる「知的なゲーム」に変わります。
 

楽しさは入口です。しかし子どもを学びの深みへ導くのは、秩序と挑戦です。この構造を理解している塾が、子どもの学力を伸ばせます。