5ラウンド制という教え方

· 塾長の指導観・雑感,英語勉強法

新指導要領に沿った英語の教科書が使われ始めて1か月が経ちました。

新教科書では、前の学年で習っている前提の文法項目が抜けているので、そのフォローが大変で、教科書の指導になかなか入れない学校もあるようです。

たとえば、開隆堂のSunshineの新教科書では、中2のうちに、現在完了形と現在完了進行形を習うことになっています。旧来の教科書では中3で現在完了形を習っていたので、今年の中3がそのまま中3の教科書内容に入ってしまうと、現在完了について習わう機会がないということになってしまいます。

そこで文部科学省が用意している教材で、その抜け漏れをなくす作業が行われます。

ただ、この文部科学省が用意したBridgeという教材という教材の中身がスカスカで、これだけだと理解しにくい教材になっています。

学校によっては、担当の先生がプリント等を使って、その抜け漏れ部分を指導しているようです。

今回の新教科書になってから多数の学校で採用されている教科書が光村出版のHere We Go! という教科書です。

この教科書では「5ラウンド制」という指導方法を推奨しています。1年分の教科書内容を一気に2か月で1周して、それを5回繰り返す。その5回はそれぞれ違う目的で指導されます。

1周目は音を聞き、その場面を挿す絵を選ぶ。2周目は音を聞き、それに合う文章を選ぶ。3周目は教科書音読し、書き写す。4周目はプリントをやり、5周目は会話をやる、というものです。

ただ、この教科書を使っている現場でもラウンド制を取り入れている学校や従来型の指導をしている学校があり、現場での運用に混乱が見られるようです。

ラウンド制では、基本的には習うより慣れろという方針なので、文法の理屈はほとんど指導されません。5ラウンド制が導入されたのは横浜の市立の中高一貫校です。そこでは、5ラウンド制の導入によって成果があがったとされています。

ただ、注意しなければならないのは、この一貫校は優秀な学校ということです。塾に通っている生徒も多いでしょう。

ということは学校では文法用語を習わなくとも、塾で習っている可能性があります。その状態でラウンド制が成果をあげたという結論に結びつけるのはいささか短絡的です。

以前にも書きましたが、教育学部に通う大学生が、教案を指導教諭のところに持っていったところ、「文法用語」は使わないようにという指示があったという話があります。

学校で文法用語が使われない教育が行われたとしても、塾や予備校で文法用語を使った教育が行われているのは通常です。当塾も文法に基づいた理解を目指しています。

『「文法用語が難しければ、使わないで説明しよう」という方向に行くのではなく、「文法用語が難しければ、どうしたらその用語をわからせるこごができるだろう」という方向に工夫を凝らすべき』(薬袋善郎「学校では教えてくれない英文法」より)

その通りだと思います。

目指す方向としてネイティブ相手にペラペラしゃべるだけを目的としてしまっている。

結果的に英語のニュースは何となくしかわからない。英語の論文は書けない。英作文は、単語を並べるだけで文法が破綻していて読めない、という学生ができあがるわけです。