整序英作文が映す子どもの思考習慣

· 英語勉強法,塾長の指導観・雑感

宇都宮市英語専門進学塾EX 塾長のブログ

「よく考えもせずテキトーに答えを作ってしまう」

――これは、勉強が伸び悩む生徒にしばしば見られる典型的な悪癖です。

この現象がよく見られるのが英語の「整序英作文」。与えられた語句を並べ替えて文を作る、あの問題です。

具体的には、「このカバンを運ぶことは私にとって簡単ではない」という日本語を英語にする問題。正解は「It is not easy for me to carry this bag.」なのですが、ある生徒の最初の一手は“this bag”でした。

主語を見つけたつもりなのでしょう。

しかしこの時点で、論理的な思考は止まっています。日本語の最初に書いてあるこのカバンを英語でも最初に書いてしまうのです。

なぜこのような誤りが起こるのか。

背景には「直感に頼る癖」と「日本語から英語へと訳すときの構造意識の欠如」があります。

英語には、無生物主語を使った形式主語構文(It is ... to ...)という基本的ですが日本語にない構造があります。

この構文を知らなければ、どこを主語にしてよいか判断できず、とりあえず日本語で最初に書いてある名詞を頭に持ってきてしまうのです。

私たちが注目すべきは、単なるミスを「ケアレスミス」で片付けるのではなく、「なぜそのような思考の流れになったのか?」を掘り下げる視点です。

考えずに書く癖は、整序英作文に限らず、長文読解や和文英訳にも共通して見られます。つまり、思考の浅さがあらゆる場面に悪影響を及ぼしているのです。

さらに厄介なのは、本人がその「浅さ」に無自覚であるということ。

「感覚でなんとなく正しそう」と思って書いた英文が、根本から構造を間違えている。

これは「定期テストでは何とかなってきた」経験の積み重ねが、かえって深い学びを妨げているケースでもあります。

では、どうすればこの悪癖を修正できるのか。答えは「文構造を音読とともに染み込ませること」。

構文をただ暗記するのではなく、実際に使う・口にする・自分の言葉として感じ取る経験が必要です。

そして何よりも、「意味を伝えるために構文がある」という感覚を持つこと。構文は飾りではありません。意味を正確に伝えるための論理です。

家庭でもできることがあります。お子さんが英文を書いたとき、単に「正しいかどうか」を問うのではなく、「なぜそう書いたのか?」を一度聞いてみてください。そこに思考の癖が現れます。そしてその癖こそが、今後の英語力を左右する“真の課題”です。

整序英作文は、単なる文法練習ではありません。

子どもの論理力、思考の粘り、そして「英語を使う脳」が育っているかどうかを映し出す鏡なのです。

私たち大人がその鏡を一緒に覗き込むこと、それが支援の第一歩なのかもしれません。