共通テスト直前、「焦り」が脳にもたらす意外な悪影響とは

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宇都宮市英語専門進学塾EX 塾長のブログ

共通テストまであと1か月。

この時期、多くの受験生が模試の結果と志望校のボーダーラインを見比べながら、「あと何点足りない」という数字に苦しんでいます。

保護者の方も、お子さんの表情が日に日に硬くなっていくのを感じ、どう声をかければよいか悩んでいらっしゃるのではないでしょうか。
 

今日は、この「焦り」について、少し違った角度からお話しします。
 

焦りは、実は脳にとって非常に厄介な状態です。

心理学では「脅威反応」と呼ばれる状態に近く、脳が「危険だ」と認識すると、思考を司る前頭前野の働きが低下することが知られています。

つまり、「このままでは間に合わない」と焦れば焦るほど、皮肉なことに、問題を解く力そのものが落ちてしまうのです。
 

よく見られるのが、焦った受験生が「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」と参考書を何冊も広げ、結局どれも中途半端になるパターンです。

あるいは、不安を打ち消そうとして、すでに解ける問題ばかり繰り返し、苦手分野から目を背けてしまう。

これらは焦りが引き起こす典型的な「手の止まり方」です。

手は動いているように見えて、実際には前に進んでいません。
 

では、どうすればよいのか。
 

私が受験生に伝えているのは、「開き直る」ことの重要性です。

これは「もうどうでもいい」という投げやりな態度ではありません。「過去の模試の点数はもう変えられない。未来の本番の結果もコントロールできない。だから、今この瞬間にできる最善のことだけに集中しよう」という覚悟です。
 

この「今、ここ」に集中する考え方は、スポーツ心理学でも重視されています。

一流アスリートが本番で力を発揮できるのは、過去の失敗や未来の結果を頭から追い出し、目の前の一球、一歩だけに意識を向けているからです。受験も同じ。「あと30点上げなければ」ではなく、「今日この1時間で、この単元を確実にする」と考える。この視点の切り替えが、最も現実的な点数アップにつながります。
 

保護者の方にお願いしたいのは、お子さんが「開き直った」状態になっていても、否定しないでいただきたいということです。一見、緊張感がないように見えるかもしれません。

しかし本当に危険なのは、焦りで思考停止に陥ること。穏やかな表情で淡々と勉強している姿は、実は最も良い状態かもしれません。
 

受験の結果は、最後の1か月で大きく変わり得ます。ただしそれは、「死に物狂いで何かをする」からではありません。

冷静に弱点を見つめ、一つずつ潰していく作業を毎日続けられるかどうかにかかっています。
「上手くいく可能性を上げる」という言い方を私はよくします。「絶対に受かる」とは言いません。

しかし、「今、ここ」のベストを積み重ねた人が可能性を最大化できるのは確かです。
 

お子さんが焦っているなら、「今日できることをやろう」と声をかけてあげてください。その一言が、止まりかけた手を動かすきっかけになるかもしれません。

参考までに→私が好きな本の一つです。Power of now