今年4月に入塾した浪人生の生徒が、先日英検S-CBTで準1級に合格しました。入塾からおよそ2ヶ月での合格です。喜ばしいことです
ただ、この生徒は現役時代、まったく異なる結果を経験していました。
受験した私立大学の英語科目では合格に届かず、現役時に挑戦した準1級も歯が立ちませんでした。
同じ生徒が、わずかな期間で、なぜここまで状況が変わったのか。その変化の中に、英語学習の本質に関わるヒントがあると感じています。
この生徒の現役時代の学習を振り返ると、ある特徴が見えてきます。市販の参考書や問題集を一定の順序で進めていく、いわゆる「ルート方式」の学習スタイルでした。
やるべき教材が明確に提示され、それを順番にこなしていく形式は、学習のペースを作りやすいという利点があります。
しかし、4月の入塾時点でこの生徒の英語力を診断してみると、土台の部分にかなりの揺らぎが見えました。
長文を読むときは単語を拾って文脈で意味を推測する、いわゆる「感覚で解く」スタイルが染みついていました。
文法用語をきちんと理解しているわけでもなく、英文解釈の手順も曖昧でした。語彙も、標準的な単語集と準1級向けの単語集に取り組んだ形跡はありましたが、定着は中途半端なままでした。
これは、本人の努力不足という単純な話ではありません。教材は確かに進めていましたし、時間も投じていました。
にもかかわらず本番で得点に結びつかなかったのは、「進めること」と「身につけること」が同じではないからです。
教材を順番にこなす形式は、学習者全員に同じ進度を提示できる反面、一人ひとりがどこでつまずいているのかを精緻に診断する仕組みまでは備えていません。土台に穴があるまま上の階に進めば、いつかどこかで必ず崩れます。
入塾後の2ヶ月、私たちが取り組んだのは、まずこの土台の組み直しでした。
単語については、標準的な大学受験用単語集の確認をやり直し、抜けを徹底的に塞いでいくことから始めました。
文法も、感覚で済ませていた部分を一つひとつ言語化できる状態に変えていきました。実際のところ、文法はまだ全範囲を扱いきれておらず、準動詞のあたりまでが現時点の到達点です。
語彙の定着も完成にはほど遠く、イディオムや派生語にはまだ穴があります。
それでも、準1級には合格しました。これは「完璧でなくても合格できる」という話ではなく、「正しい場所に手を入れれば、土台は意外と早く立て直せる」という話です。
何をやるべきかが明確に見えれば、生徒は迷いなく時間を投じることができ、その時間が無駄になりにくい。これが、この2ヶ月で起きていたことの本質だと感じています。
教材を順番に進めること自体が悪いわけではありません。
問題は、進めるだけでは「定着」までは保証されない、という構造を理解しないまま、進度の達成感だけを頼りに走ってしまうことです。
これから英語学習を本格化させていく高校生や中学生の保護者の方には、この事例から一つの視点を持ち帰っていただきたいと思います。
それは、「教材を順番に進められているか」ではなく、「土台が積み上がっているか」を見ること。
前者は形式的に測れますが、後者は専門的な目で診断しなければ見えません。この見極めの差が、数年後の到達点に大きな違いを生むのです。
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