授業中、生徒に「では、この部分を訳してください」と言うするとき、私は相手の様子をよく注視しています。
訳された日本語が合っているかどうかを確認するのはもちろんですが、それ以上に多くのことを、答え始めるまでのわずかな時間や、その間の視線の動きが教えてくれるからです。
たとえば、指名してから訳し始めるまでに時間がかかり、その間に視線が英文の上を左右に行ったり来たりしている生徒がいます。この動きには、はっきりとした意味があります。
多くの場合、その子は英文を文法構造に沿って読んでいるのではなく、並んでいる単語をいくつか拾い、そこから内容の見当をつけて、それらしい日本語を組み立てようとしているのです。
いわゆる「単語のつまみ食い」による意味の推測です。この読み方は、短い文や易しい文であれば、ある程度正解にたどり着いてしまいます。だからこそ厄介なのです。
本人も周囲も、正しく読めていると錯覚してしまう。しかし、文が長くなり構造が複雑になった途端、この方法はまったく通用しなくなります。そしてこの癖を抱えたままでいる限り、英語の実力はある地点で頭打ちになります。
厄介なのは、こうした読み方の癖が、テストの答案からは見つけにくいという点です。
答案に書かれているのは最終的な訳だけであり、そこに至るまでの思考の過程は残りません。たまたま正解していれば、癖は隠れたままになります。
ところが、目の前で訳させると、答えにたどり着くまでの過程がそのまま表に出てきます。視線の動き、口ごもり方、詰まる箇所。これらは、答案という結果だけを見ていては決して得られない情報です。
そのため私は、訳させ方にも意識的に変化をつけています。一つは「英文を前から順番に訳してください」という指示。もう一つは「きちんとした自然な日本語に整えて訳してください」という指示です。
前から順に訳させると、その生徒が英語の語順のまま意味を追えているのか、それとも語順を無視して単語を拾っているだけなのかが見えてきます。
そのうえで、今度は自然な日本語に整えるよう求めると、構造を本当に理解できているかどうかがさらにはっきりします。前から読んで意味を取り、それを日本語として再構成する。この二段階を通すと、どこで理解が崩れているのかが、驚くほど明確に浮かび上がってくるのです。
こうしたことを書くと、粗探しをしているように聞こえるかもしれませんが、目的はその逆です。
癖や弱点を早い段階で正確に把握できれば、それだけ早く手を打てます。放置すれば固定化してしまう読み方の癖も、初期であれば十分に修正が利きます。だからこそ、見つけることそのものに大きな価値があります。
授業というのは、知識を教える場であると同時に、生徒一人ひとりの学力や理解の状態を把握する場でもあります。むしろ、正確に把握できているからこそ、その子に本当に必要な指導ができる。教えることと見抜くことは、良い授業の中では常に一体になっているのだと考えています。
宇都宮市英語専門進学塾EX 塾長のブログ
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