英語の長文読解について、「知らない単語が出てきても、文脈から推測すればいい」というアドバイスを耳にすることがあります。実際、入試の長文には未知の単語が必ず含まれますから、この助言そのものは正しいものです。
しかし、この「推測する力」については、一つ重要な前提があります。それは、推測する力は、ある程度の語彙が身についていて初めて機能する、ということです。
考えてみてください。一行の中に知らない単語が三つも四つも出てくる状態で、文脈から推測しようとしても、そもそも推測の足場になる部分が存在しません。周囲の単語が分からなければ、文脈そのものが立ち上がってこないからです。この状態で「推測しなさい」と言われても、実質的には当てずっぽうにしかなりません。
逆に、語彙の土台がある程度できている生徒は、知らない単語に出会ったときの振る舞いがまったく違います。「あ、この単語は見たことがないな」と冷静に認識し、周囲の文脈から意味の見当をつける。あるいは、その語が全体の理解に致命的でないと判断して、あえて読み飛ばして先へ進む。どっしり構えて対処できるのです。この落ち着きは、周囲の単語が分かっているという安心感から生まれています。
ここで一点、補足しておきたいことがあります。ここで言う「推測」は、単語をいくつか拾って全体の意味を勝手に想像する、いわゆる感覚的な読み方とはまったく別のものです。
文構造を正確につかんだ上で、その中の一語の意味だけが分からないときに、前後関係から絞り込む。これが本来の推測です。土台のない状態での当てずっぽうとは、似て非なるものだと考えてください。
つまり、推測する力は、語彙力という土台の上に築かれる二階部分にあたります。一階部分ができていないのに二階を建てようとしても、それは成り立ちません。
そして、ここからが重要なのですが、この二階部分は、語彙を覚えた翌日にできあがるものではありません。ある程度語彙を身につけた後、実際にどれだけの量の英文を読み、その中で未知の単語に出会い、対処する経験を積むか。訓練を始めてから、実際の力として発揮されるようになるまでには、相応の時間がかかります。
この構造こそが、英語という教科を早くから始めるメリットが特に大きい理由です。語彙を積む期間と、その語彙を土台に読解経験を積む期間。この二段階分の時間が必要になるからです。高3になってから慌てて語彙を詰め込んでも、それを使いこなす読解経験を積む時間を確保するのはなかなか難しくなってしまうのです。
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