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頭に入るのは4つまで。訳し終えた英文を何度も読む理由

· 塾長の指導観・雑感,英語勉強法

英文を一度訳し終えると、多くの生徒はその文章を閉じて次に進みます。

 

意味はもう分かったのだから、同じ文章を読み返すより、新しい文章をたくさん読んだほうが力がつく。そう考えるのは自然なことです。けれど、英文を読む力を育てるには、訳し終えた文章を何度も読み返す時間が欠かせません。

 

音読では、語句を瞬時に捉えて声に出さなければなりません。以前の記事で、そのためには今読んでいる語句の一歩先に目を送りながら、直前の語句を頭に残しておく必要がある、と書きました。

 

今回はその先の話です。頭に残しておける量には、限りがあります。

 

次の英文で考えてみます。

The book that my brother bought at the station last week was more interesting than I expected.
(兄が先週駅で買った本は、思っていたより面白かった)

 

主語の The book に対応する動詞 was が出てくるのは、12語目です。そこまで The book を覚えていないと、was が何の話か分からなくなり、文の頭に戻って読み直すことになります。単語をよく知っているのに何度も前に戻ってしまう生徒には、これが文のあちこちで起きています。

 

米ミズーリ大学の心理学者ネルソン・コーワンは2001年の論文で、人が一度に頭にとどめておけるのは、平均しておよそ4つのかたまりだとまとめました。

 

よく知られた「7つ前後」という数字は、おおまかな目安にすぎなかったとしています。頭の中に、箱が4つほどしかないようなものです。

 

単語を一つずつばらばらに入れていては、とても足りません。

 

一方、「The book」「that my brother bought」「at the station」「last week」と4つのかたまりで捉えられれば、主語を見失わずに was までたどり着けます。

 

英語を読むうえで「短期記憶力を鍛える」と言うとき、私が伸ばしたいのは、箱の数よりも、一つの箱に入るかたまりの大きさです。that my brother bought をひと目で一つのまとまりとして捉えられる生徒は、同じ4つの箱で、ずっと長い文を抱えられます。

 

では、なぜ訳し終えた文章を使うのか。

 

初めて読む文章では、知らない単語や文の構造を考えることに頭を使い、大きなかたまりで読む練習にまで手が回りません。

 

意味がもう分かっている文章なら、その分の余裕を、かたまりを大きく取ることに回せます。

 

とくに音読は途中で止まれないので、一歩先を見ながら前の語句を抱える動きを、否応なく繰り返すことになります。

 

読み返すうちに、that my brother bought のように名詞を後ろから説明する形が、一つのまとまりとして入ってくるようになります。

 

その形は、初めて読む文章の中でも同じように働きます。初見の文章を次から次へと読むだけでは、この練習の時間がほとんど取れません。

 

これに近いことを、日本の大学1年生で確かめた研究があります(2002年発表)。一方のグループは、音声を聞きながら読む回も含めて、1つの文章を7回ずつ読む練習を10週間で28回行いました。

 

もう一方のグループは同じ時間、毎回違う短い英文を読む教材に取り組みました。

 

練習に使っていない文章を初めて黙読する速さは、繰り返し読んだグループが1分あたり約113語から約154語に、毎回違う文章を読んだグループが約116語から約126語になりました。ただ、各9人と少人数で、二つのグループの差は統計的に確かとまでは言えず、内容理解のテストでも差は出ていません。

 

著者自身、はっきりした結論は出せないとしています。それでも、毎回新しい文章を読んだほうが伸びた、という結果にはなっていません。

 

読み返すのは、音読でも黙読でもかまいません。『速読英単語』のような、単語と英文がセットになった教材を繰り返し読むのも、よい訓練になります。

 

ただし、回数をこなすこと自体が目的ではありません。意味を取りながら、途中で戻らずに自然な速さで読み通せるようになったら、その文章は卒業です。

 

先日の記事で、「分かる」と「できる」は違うと書きました。英語は、その「できる」の比重がとくに大きい教科です。

 

読み返した文章がすらすら読めるようになるのは比較的早いのですが、その力が初めて読む文章にまで表れるには時間がかかります。

 

先ほどの研究でも、10週間で変わり始めたのは速さまででした。

 

ですから英語の力は、今日分かったかどうかではなく、半年後、一年後にできるようになっているかで見ていただきたいと思います。

 

同じ英文を何度も読んでいる姿は、先へ進んでいないように見えるかもしれません。けれど、初めての英文を読む力の土台は、その時間に作られています。

宇都宮市英語専門進学塾EX 塾長のブログ

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